この夏から1年間の予定でタイへ留学している生徒がいます。
交換留学制度を利用しているのですが、英語圏ではないタイともなると、私などには想像もつきません。
言葉の問題、食事の問題、生活習慣の問題・・・。
さまざまな点で不安が頭をよぎります。
しかし、本校のAさんは、どこの国に派遣されるかわからない中でも、できればタイに行きたいと考えていたそうです。
そのAさんから月1回のペースで送られてくる報告書が私のもとに届きました。
これまでもさまざまな留学生からの報告書を見てきましたが、今回のAさんの報告書を読んでいて、思わずうなってしまいました。
「タイに来てからもうすぐ2か月経ちます。私は元気で楽しく過ごしています。タイにも徐々に慣れてきて、私はいろいろなことを感じ、考えるようになりました。・・・私は今まで一度も海外に行ってことがなく、もちろん海外で過ごしたこともありません。・・・海外初心者の私は、ホームステイどころか自分がどうやって過ごすべきなのか、時々とても不安になります。・・・」
元気で楽しく過ごしているけれど、不安になる。どういうことなのだろうと思ったら、
「(住んでいる地域には)日本人はほとんどいません。私は今までボランティアできている日本人の先生一人しか、日本人に会ったことがありません。タイは親日国であり、多くの人が日本に興味があり、日本に行きたいと思っています。そのため、日本人のことや習慣について聞かれた時、自分が基準になってしまうのではないかと思います。」
「日本のことを聞かれた時、自分はいかに日本のことを知らないかがよくわかりました。そして日本人でも日本について知らないことは沢山あるのだと思いました。」
よく、将来は海外で仕事をしたい、過ごしたい、といった希望を持っている生徒に対して、以前は授業の中で「日本人として、日本のことをきちんと説明できなければ恥ずかしい。歴史や文化、習慣などについて質問されて答えられないと困るぞ」などと言ってきましたが、教員が話すよりも、こうした実際の留学生の痛切な思いを読んだ方が、よりグッと感じられます。
Aさんは、元気に楽しく過ごしながらも、一方でもどかしさも感じているようです。言葉や習慣、文化を学ぶだけでなく、一人の日本人として、といったより根本的なことも留学生活で学んでいるんだなとしみじみ感じました。
Aさん、頑張ってください。
心から応援しています。