朝、電車の中で天声人語と折々のことばを読むのを日課にしています。
ところで、今朝の天声人語を読んでいて思わず吹き出してしまいました(マスクをしていたので、周囲の人にはあまり気づかれませんでしたが…)。
どんな内容かというと、くしゃみのあとの呪文は古くからあったらしいという話題の中で、ある「女性」の呪文がとてつもなくすごいのです。
ヘーイックションッと大声で放ったあとに必ず「チクショーこのヤロー」がついてくるというのです。
そういえば私にも覚えがあります。「チクショー」だったか「このヤロー」だったかは定かではありませんが、確かになにか呪文のようなことばをつぶやいていた記憶があるので、我が身が重なって思わず吹き出してしまいました。
また天声人語に、清少納言は「枕草子」でそれ(=くしゃみのあとの呪文)を嫌がっている、とも書かれていました。
平安時代、「くしゃみ」をどのようにとらえていたのか、『枕草子』では何度か話題になっています。
1.「にくきもの」より
(にくきもの)鼻ひて誦文(ずもん)する人。
→「鼻ひて」が「くしゃみをする」意。「誦文」は「呪文」と同じ。つまり、天声人語で話題になっている部分です。くしゃみをしたらすぐに呪文を唱えないと不吉だと当時は考えられていたのでしょうが、呪文さえ唱えれば大丈夫と、無遠慮にくしゃみをする人のことを、清少納言はにくらしいと思っていたのだろうと考えられます。
2.「宮にはじめて参りたるころ」より
物など仰せられて、「われをば思ふや」と問はせたまふ。御いらへに「いかにかは」と啓するに合はせて台盤所の方に、鼻をいと高うひたれば、「あな心憂(こころう)。そら言するなりけり。よしよし」とて入らせたまふ。
→清少納言が仕えていた中宮定子(ていし)様が、「私のことを大切に思ってくれてる?」とお尋ねになるので、「もちろんです」とお答えした瞬間、台盤所(仕えている女房が詰めている所)からとても大きなくしゃみの音がしたので、定子様は「あらいやだ。嘘をついたのね。もういいわ」とおっしゃって、奥にお入りになったというのです。
このエピソードからも、「くしゃみ」は平安時代、よくないことが起きる前兆と考えられていたことがうかがえます。「くしゃみ」を聞いて、定子様は、清少納言のことばを「嘘だ」と感じて奥に入ってしまったわけですから…。
3.「したり顔なるもの」より
したり顔なるもの 正月一日のつとめて、さいそに鼻ひたる人。
→「得意顔なもの 正月一日の早朝に、最初にくしゃみをした人。」よくないことが起きる前兆とは別に、元旦のくしゃみだけは吉兆とする俗信が当時あったこともうかがえます。
天気予報によれば、そろそろ花粉が多く飛ぶとのこと…。
花粉症である私にとって、くしゃみは曲者であり大敵です。
今朝の新聞の一面には、早咲きで知られる静岡県の河津桜が見頃を迎えたという記事もありました。
春の訪れは、くしゃみの訪れでもあります。