昨日、3人の日本人(赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏)にノーベル物理学賞が贈られるという喜ばしいニュースを見て、私自身は何の関係もないのに、少々興奮してしまいました。
青色LEDの基礎研究から技術者による応用まで、高く評価されたことがうれしいと、2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏のコメントにありました。
スウェーデン王立科学アカデミーは、授賞の理由として「3人の発明は革命的で、20世紀は白熱電球の時代だったが、21世紀はLEDによって照らされる時代になった。誰もが失敗してきた中、3人は成功した。世界の消費電力のおよそ4分の1が照明に使われる中、LEDは地球環境の保護にも貢献している。LEDは電力の供給を受けにくい環境にある世界の15億人の生活の質を高める大きな可能性を秘めている」と述べており、青色LEDは「人類に最大の恩恵をもたらした発明」と称えています。
このニュースに関して言えば、ニュートリノの観測で2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんのコメントが、ユーモアたっぷりで私のお気に入りです。
「一番うらやましいのが実生活に役立つ発明で受賞されること。私は史上初めて自然に発生したニュートリノの観測に成功したことで受賞しましたが、これと言って実生活にお役に立ったという実感がありません。自分の発明で人々が幸せになる。その功績でノーベル賞をいただく。この上ない喜びでしょうね。」
ところで、ノーベル賞といえば、忘れられないことが一つあります。1994年、大江健三郎さんが文学賞を受賞した時のことです。
私が高3の時に現代文を担当してくれた先生は、とても個性的なベテラン教師で、或る話題にはまると、いつまでも熱く語るような先生でした。
その先生は、授業で扱う安部公房の「棒」という短編小説のプリントを配りながら、「この次、日本人がノーベル文学賞を受賞するとすれば、安部公房だなあ。うん、間違いない。」と独り言のようにつぶやいていたのです。
残念ながら、安部公房は平成5(1993)年に亡くなってしまいましたが、1994年にノーベル文学賞を受賞した大江健三郎が、カメラの前で話している映像をテレビで見て、私は思わずハッとさせられました。大江氏は、だいたい次のようなことを言っていたのです。
(私は、たまたま巡り合わせで今回ノーベル賞を受賞しましたが、本来なら、私の前に、日本人で文学賞を受賞してもおかしくない方々がいました。たとえば、安部公房…。)
高校時代の国語の先生の独り言と、ノーベル賞を受賞した大江氏が言ったことが、私の中でピタリと重なったのです。
今から20年も前のことですが、鳥肌が立つような思いをしたことが、昨日のことのように甦ってきます。